【第11回】番外編「ふちょう」 #01

今回は前にこのコーナーを借りて掲載した「カネクの顔」に引き続き、番外編として「ふちょう」の特集を2回にわたって紹介していきたいと思います。

ところで「ふちょう」って何? と思われる方も多いはず。「ふちょう」とは市場業界で使われる数の単位を言います。単に数の単位と言っても意外と奥の深い「ふちょう」。それでは知られざる「ふちょう」の魅力へ皆さんを誘っていきましょう…(それほど大袈裟なものでもありません)

第一回 ふちょうの定義

市場業界ではかかせない存在であった「ふちょう」。しかし現在では公の場でのふちょうは使われなくなりました。公の場というのはいわゆる「競売」です。なぜ使われなくなったというと、誰もが分かりやすい「競売」を進めていく上で分かりにくい「ふちょう」は不必要とされてしまったのです。そもそも「ふちょう」というのは地方によって現し方も違えば、数え方も違います。言われてみれば日本共通でもない単位で品物が取引されていくってのもおかしな話だったのかもしれませんね。しかしなぜ「ふちょう」が必要だったのでしょう? はっきりとした理由は定かではありませんが、今の考え方とは逆に、一般の人や、他の市場の人に相場を悟られないようにするためであったという話もあります。そのために地方によって違ったのでしょう。

競売では使われなくなってますが、競売以外の市場内でのやりとりでは現在でもあたりまえのように使われています。やはり市場の雰囲気ってのを代表するものの一つであると思います。いずれふちょうの聞こえなくなる市場になってしまうのでしょうか…

それではふちょうの表し方をお勉強していきたいと思います。ちなみに名古屋の青果で使われているものです。

基本編

  • それではまず「1」です。指先はピンとのばし、天を貫くかのごとく表します。前に向けてしまうとお母さんに「人を指差してはいけません!」と怒られますので気をつけることが大切です。
  • 次は「2」です。指先まで神経を研ぎ澄まし、「ビクトリー!」と叫んでしまうくらいしっかりと表しましょう。顔の横で表すと単なる「ピースサイン」と間違われることがあるので気をつけましょう。
  • 続きまして「3」です。決して「オッケーサイン」ではありません。あくまで「3」です。気をつけなければならないのが、右の写真のようによく間違って使うことです。名古屋のふちょうに右の表し方はありません。
  • そして「4」です。すこし指の間隔は開くと良いでしょう。指を揃えてしまうと手刀を振りかざすと勘違いされかねません。親指はしっかりと折り曲げ生命線にくっつけるのが美しい「4」の表し方です。
  • では中間地点の「5」です。見たまんまの「5」です。あまり手を伸ばしすぎて表すと先生に手を上げているのと勘違いされて黒板に答えを書くか、国語の教科書を読まされるハメになるかもしれません。
  • 一番勘違いされやすい「6」です。これは気をつけなくてはいけません。レストランで「お客様何名様ですか?」と聞かれたときに、6人だとしたら…市場業界の人間でよくある光景ですが、自然と自信満々に店員さんに向かってコレを出してしまうのです。身の毛もよだつ光景ですね。
  • これも危険な「7」です。ちゃんと人差し指は上に向けて表しましょう。少しでも角度や位置を間違えてしまうと大変なことになりかねません。間違っても片目をつぶって前を向けた時には周りの人たちに多大な被害が及ぶことに間違いないでしょう。
  • 「8」です。真面目な話、「7」と同様片手で数字を表すためにこうなります。ずっとやってると手がつりそうになりますので気を付けましょう。写真のように薬指が小指にかかるように表すとなかなか美しく見えますね。
  • 最後に一般の方に一番分かりづらい「9」です。まるで鉄砲を構えるときに様な感じで表します。人差し指はしっかりと曲げないと「1」と間違えられ、握りすぎるとゲンコツと勘違いされてしまうという難易度の高いふちょうです。

とまぁアホなことばかり書いてきましたが、片手で表せるということで、実は非常に実用的です。少し離れていてこえに出せなくても組み合わせることによってどんな数字でも表すことができます。大阪では1~9までではなく、例えば34とか67とかまですべて表し方があるそうです。覚えるのが大変ですね。

では次回のふちょう特集ではそれぞれの数の呼び方について紹介していきたいと思います。乞うご期待!